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小児科にて ~柏木詩織~

柏木詩織は、昨晩から熱をだした子供を連れて近所の小児科へ行った。

「柏木さん、診察室へどうぞ。」
呼ばれて診察室に入る。
すこし頭のうすくなった50代くらいの先生の前に子供を座らせ、詩織はその横の丸椅子に座った。
先生の横には二人の女性の看護師が立っている。

「どうされましたか」
「子供が昨晩から37度の熱を出しまして・・・」
「そうですか。・・・咳や、鼻水は大丈夫ですか。」
「咳はないですが、鼻は少し出てます。」
「そうですか。どんな鼻水ですか。さらさらした鼻水ですか、それとも黄色っぽいのが出てますか」
そう問われて、詩織は今朝の子供の鼻水を思い出しながら言った。
「色は黄色じゃないです。・・・透明というか、白っぽいような・・・どろどろした感じの・・・・そう!・・・ザーメンのように白い、どろどろした感じです。」
一瞬、診察室の空気が凍りついた。
「しまった!」と詩織は思った。
ふと顔を上げると、看護師が、にやっと笑った。
詩織は顔がカッと熱くなるのを感じた。

「そうですか。・・・では、口をあけてください。・・・あーん。」
先生は、何事もなかったように言った。

子供の診察を終え、先生は言った。
「まあ。風邪ですね。お薬を3日分だしておきます。それでも症状がおさまらなかったらまた来てください。・・・そうそう、鼻水の様子も見てあげてくださいね・・・おだいじに。」

詩織は思った。もう二度と来ることはないと。

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